お菓子作りにおいて度々使われるベーキングパウダーや重曹などの膨張剤はいったいどんな働きがあるのか、どんな種類があるのか謎ですよね。
食品添加物だし体に悪いのかとか気になる方もいらっしゃると思います。結論から申し上げますとお菓子に含まれる程度の膨張剤に害はないです。詳しくは後ほど紹介します。
今回はそんな生地作りでの脇役膨張剤について紹介します。
膨張剤とは
膨張剤は焼き菓子などの生地の膨らみを助ける食品添加物のことです。
お菓子の生地の膨張作用は主に生地の中に含まれる気泡が熱によって膨張したり、水分が蒸発して生地を持ち上げたりして膨らみます。
これらの膨張作用のことを一般に「物理的膨張作用」と呼びます。そして膨張剤を使用した膨張作用は「化学的膨張作用」と呼びます。
化学的膨張作用は薬剤が熱によって分解する際に発生する「炭酸ガス(二酸化炭素)」や「アンモニアガス」を利用して生地を膨らまします。
膨張剤を使用することによって計量や混ぜ方などを間違えなければ簡単に生地をフワフワにすることができる優れものです。
ベーキングパウダー
ベーキングパウダーはバターケーキや饅頭の皮など比較的重い生地をふっくらとさせる場合に使われる膨張剤です。
ベーキングパウダーは重曹を主成分として何種類かの助剤を組み合わせた言わば重曹の改良版みたいなものです。
ベーキングパウダーを入れる分量の目安としてはホットケーキや蒸しケーキの場合は小麦粉100gに対してベーキングパウダーは10g、クッキーやバターケーキ場合は小麦粉200gに対してベーキングパウダーは5gがベストです。
ベーキングパウダーを入れすぎてしまうと生地が苦くなってしまったり、逆に膨らまなくなってしまうので注意してください。
ベーキングパウダーにはなんにでも使える持続型のものと焼き菓子用と蒸し菓子用のものがあります。通常出回っているものは持続型です。
これらの違いは何度くらいで生地を良く膨らませることが出来るのか区別されていることです。
一般的な持続型は低温から高温まで長く持続して炭酸ガスを発生できるのが特徴です。
焼き菓子用は高温の温度帯で炭酸ガスが最も発生するように調整されており、遅効型と呼ばれています。
蒸し菓子用は蒸し器の中が100度以上になることはないので、それ以下の温度で炭酸ガスが効率よく発生するように工夫されていて、速効型と呼ばれています。
ただし焼き菓子用のベーキングパウダーはどの焼き菓子にも適しているわけではなくて、例えばマドレーヌなどの短時間で焼き上げて最後に一気に膨らませて割れ目を入れたいときには適しているのですが、パウンドケーキなどの焼き時間が長いお菓子では持続型のベーキングパウダーの方が適しています。
重曹
重曹は利久饅頭やどら焼きの皮など、比較的濃い色調のお菓子を膨らませる目的に好んで使われる膨張剤です。
正式名称は「炭酸水素ナトリウム」といいますが、高温で加熱すると分解して「炭酸ガス(二酸化炭素)」を発生させる性質を持っています。この炭酸ガスがお菓子の生地を大きく膨らませるのです。
炭酸ナトリウムはアルカリ性の物質なので、加熱による生地の着色を促進する作用を持っています。なので、黒糖やチョコレートを使った濃い色の生地に重曹を加えると、その濃い色より鮮やかに仕上げることが出来ます。
逆に生地を白く仕上げたい場合などには向いていないです。
また重曹には独特のにおいや苦みがあります。なので入れすぎてしまうとお菓子の香りや風味が損なわれてしまうので注意してください。
イスパタ
イスパタという膨張剤はあまり一般的には知られていないのですが、主に和菓子を作る際に用いられます。洋菓子ではまず使いません。
イスパタは合成膨張剤でベーキングパウダーと同じく色々な膨張剤を組み合わせて作られたものです。
イスパタの特徴はガスを発生させる薬剤を二種類用いていることです。「炭酸水素ナトリウム(重曹)」と「塩化アンモニウム」が入っています。
ベーキングパウダーは「炭酸水素ナトリウム(重曹)」のみなのでベーキングパウダーと比べるとイスパタの方が生地を膨らませる力が強いといわれています。
またイスパタは生地を白く仕上げたい場合に向いています。
ただし「塩化アンモニウム」から発生される「アンモニアガス」は炭酸ガスと違って独特の臭気があるので、ガスが発生した後少しでも生地の中にアンモニアガスが残っているとお菓子全体の風味が悪くなってしまいます。
なのでイスパタは、生地の厚さが比較的薄くアンモニアガスが発散しやすいものに使われます。饅頭の皮などによく使われますね。ただこの場合も重曹やベーキングパウダーと組み合わせて使われることがほとんどで単独で使われることはあまり無いです。
またイスパタは生地の中への分散性が余り良くないので、場合によっては仕上がりの生地に斑点状のムラが出てしまうことがあります。そうならないように必ず使う前には水で溶いて溶け残りがないように注意が必要です。
それぞれの違い
膨張剤3種類を紹介しましたが大まかにそれぞれの違いをいうとまず原材料としてベースは重曹、そこに他の膨張剤やらを加えたものがベーキングパウダーとイスパタになります。
洋菓子の場合はほとんどベーキングパウダーが使われます。重曹やイスパタは和菓子に使われることが多いです。
洋菓子でもベーキングパウダーではなく重曹を使う場合は焼き色を濃く仕上げたい場合です。
焼き色の違いとして重曹は焼き色を濃く付けたいときに適していて、イスパタは白く仕上げたいときに適しています。そしてベーキングパウダーは焼き色を付けたいときには濃く、白く仕上げたい場合は白くなります。
焼き色の違い
なぜ焼き色に違いが出るのかというとガスが発生した後に残る物質によって変化がでます。
重曹は高温で加熱すると分解して炭酸ガスが発生するのですが、熱の作用だけでは重曹は不完全にしか分解されず重曹二分子を材料としても、炭酸ガスは一分子しか発生しません。
ガスが発生した後残りの一分子は「炭酸ナトリウム」に変化します。この炭酸ナトリウムはアルカリ性を示す物質で加熱による生地の着色を促進する作用を持っています。
では饅頭などを焼き色を付けずに蒸したりして重曹を使って仕上げようとすると白くなるのかというと白ではなく黄色になってしまいます。
何故かというと、小麦粉の中に含まれる「フラボノイド」という色素は酸性の状態では無色なのですが、アルカリ性では黄色く発色するという性質をもっているからです。
イスパタの場合はガスが発生した後残るのは「塩化ナトリウム(食塩)」と「水」なので生地のphを中性から微酸性に調整しやすいので白く仕上がります。
ベーキングパウダーはガスの発生する温度を色々と調整したものが製造されているのですが、その他に仕上げの色に合わせた助剤の調整も行われています。
なので焼き色を濃く仕上げたいお菓子には生地のphがアルカリ性に傾くように、白く仕上げたい場合は生地のphが酸性に傾くように調整されています。
ベーキングパウダーの代用品
ベーキングパウダーが無いときには他のもので代用することが可能です。
まず重曹ですね。ベーキングパウダーの主成分は重曹なので当然代用可能です。代用する際には分量に気を付けてください。ベーキングパウダーの同じ量入れてしまうと苦みが出てしまいます。代用する場合は元の分量の半量の重曹をいれてください。
それと重曹にクリームオブタータ(酒石英)を混ぜてベーキングパウダーの代用もできます。クリームオブタータの場合はベーキングパウダー5gに対して重曹1.3gクリームオブタータ3gです。
それとドライイーストでも代用可能です。しかし発酵が必要になるため作り方が少々変わってしまうのが難点ではあります。
苦肉の策ですがホットケーキミックスを使うという手もあります。この場合粉にベーキングパウダーや砂糖などが既に配合されているので元のレシピ通りの味にはならないですが、ちゃんと膨らむしこれはこれで美味しいお菓子が作れます。
膨張剤は体に悪いのか
上でも述べたのですがお菓子に含まれる程度の微量の膨張剤でしたら体に影響はないです。
膨張剤に含まれる化学物質個々を調べると有害とされる物質もあるのですが、それのみを大量摂取するわけでは無いので体に危険を及ぼす心配はないでしょう。
ベーキングパウダーに含まれる成分「ミョウバン」こちらは硫酸アルミニウムのことで体に悪影響があるのではないかと議論されていたのですが、最近になってアルミニウムは摂取しても体外に排出されることが確認されています。
また体への害も確認されていません。
どうしても気になってしまう方はアルミニウム不使用のベーキングパウダーが販売されているのでそちらを使用してみてください。
まとめ
お菓子の材料として度々使われる膨張剤、作りたいお菓子によって何を選ぶか何故この膨張剤が使われているのか特徴を知ることによって分かってきます。
食品添加物だからといって何もかも体に悪いわけではなくそれを入れる理由があるのでそういうところも今回紹介しました。
日本人はフワフワした生地が好きな方が多いですよね、最近は固めやしっかりした生地が流行っていたりもしますが。膨張剤の正しい使い方を理解して美味しくフワフワした生地を是非作ってみてください。
コメント