オーストリアの菓子、ウィーン菓子

世界のお菓子




オーストリアの菓子はウィーン菓子と呼ばれていてケーキ好きには有名ですが、一般的にはあまり知られていないものが多いです。また隣国のドイツでも食べられるお菓子が多いのでごちゃごちゃになったりします。

日本でウィーン菓子を販売しているところで有名なお店は「デメル」ですね。デメルのザッハトルテは有名です。

ウィーン菓子は質素ですが甘味が強いものが多く、紅茶よりもコーヒーと合わせて食べるのに向いています。オーストリアは「ウィンナーコーヒー」発祥の地です。コーヒー文化が根付いているためコーヒーに合うケーキが多く生まれたのでしょうね。

ちなみにオーストリアではウィンナーコーヒーとは呼ばないそうです。あくまでも外国人が名付けた名称だそうですよ。

今回はそんなオーストリアのお菓子「ウィーン菓子」について紹介します。

ザッハトルテ

ウィーン菓子といったらこのチョコレートケーキですね。日本でも認知度が高く有名ですね。

ザッハトルテはチョコレートのバターケーキにアプリコットジャムのナパージュをかけてその上にチョコレート入りのフォンダンをかけて仕上げます。スポンジの中にアプリコットジャムを挟むものもあります。カフェやホテルでは生クリームを添えて提供するのが一般的で、ケーキ屋さんでもこだわっているところは持ち帰り出来るように生クリームを別の容器に入れてザッハトルテと一緒に販売していたりします。

表面をつやつやにするためにテンパリングを行い、フォンダンをかけるときも表面をきれいにならすようにするには熟練の技が必要だそうです。

「チョコレートケーキの王様」と呼ばれているザッハトルテですが、コーティングのフォンダンはチョコレートよりも砂糖の方が分量が多いので砂糖を強く感じるケーキになります。なのでかなり甘く、コーティングはじゃりじゃりしているので日本人は苦手な人が結構いるみたいです。

また、日本人向けに改良しているものやコーティングをフォンダンではなくチョコレートのみにしているものやチョコレートの生クリームを使っているものも販売しています。ここまで離れるとザッハトルテという名前にしないで普通にチョコレートケーキとして販売してほしいですね。

ザッハトルテは1832年にフランツ・ザッハーが考案しました。のちに息子のエドゥアルト(次男)がホテル・ザッハーを開業すると、ザッハトルテはホテルのレストランとカフェで提供されました。

レシピは門外不出とされていたのですが、3代目エドマンド・ザッハーのときにホテルの経営が傾いてしまい、資金援助をしたウィーンの王室ご用達のケーキ店「デメル」が、代償にザッハトルテの販売権も得ました。この際に元祖ザッハトルテの文字をケーキの上に書く権利も譲渡したとも言われています。

その後、ハンス・スクラッチ「ウィーンの菓子店」という本にまで秘密にされてきたレシピが掲載されてしまいました。ホテル・ザッハーがデメルを相手取って商標使用と販売の差し止めを求めて裁判を起こします。この裁判は7年にも及んだそうです。これが有名な「甘い七年戦争」です。

結果はホテル・ザッハーにもデメルにも双方にザッハトルテの販売を認めるという判決が下りました。なのでデメルのものはデメルのザッハトルテ、ホテル・ザッハーのものはオリジナルザッハトルテとして売ることになったのです。

ホテル・ザッハーのザッハトルテはスポンジの中にアプリコットジャムを挟み、デメルのザッハトルテは挟まないという違いがあります。

アプフェルシュトゥルーデル

リンゴのフィリングをシュトゥルーデル生地という薄いパイのような生地で巻いたお菓子です。

ウィーン菓子として有名ですが、ハンガリーの人がトルコのお菓子バクラヴァの生地を利用してリンゴを包んだものが起源であると考えられています。バクラヴァというお菓子はフィロという薄い生地を重ねたものに刻んだナッツ類挟んで焼き、その後にかなり濃いシロップをかけるお菓子です。アプフェルシュトゥルーデルにはこのシロップはかかっていないのでそんなに甘味が強いお菓子では無く食べやすいです。

シュトゥルーデル生地はかなり薄く生地の下に新聞紙を敷いても生地を通して読めるくらいのものが好ましいとされています。この薄さを出すために生地にサラダ油を混ぜる、生地を良く叩きつけてグルテンを生成させる、生地を伸す前にしっかり休ませるということが大切になります。

カフェやレストランで提供されるときはバニラアイスクリームが上に盛られている場合が多く、温かいアプフェルシュトゥルーデルと冷たいアイスクリームの相性は抜群です。

ドイツでも食べられるお菓子なのでドイツ菓子の店でも販売していることが多く、日本人に親しみやすい味も相まって日本でも販売しているお店が多いです。なので、比較的入手しやすいお菓子のためぜひ食べてみてください。

カーディナルシュニッテン

メレンゲ生地と卵黄を中心とした黄色い生地を交互に絞って焼いたふんわりした生地にコーヒー風味のクリームを挟んだお菓子です。細長い棹状にして、一切れずつ切って販売されていることが多いです。

フワフワした生地と甘味を抑えたコーヒークリームはくどくないので日本人でも食べやすいお菓子になっています。こちらのお菓子も日本でも販売していることが多いので入手しやすいお菓子になります。

カーディナルとはカトリックでローマ教皇の最高顧問の枢機卿をさします。何故この名前が付いたかというと、カトリックの象徴色の黄色と白色を表現したという説や枢機卿の衣装の色または帯の色に似せたとする説があります。

シュニッテンとは、程よい大きさに切り分けたお菓子のことを指します。あまり馴染みのない言い方ですが、オーストリアやドイツのお菓子ではよく使われる単語です。カーディナルシュニッテンの他にはブラバンターシュニッテンというシュー生地にカスタードクリームとカシスのジャムを挟んだお菓子によく使われる単語ですね。

リンツァートルテ

アーモンドやクルミなどのナッツ類の粉とシナモン、ナツメグなどの香辛料を入れたタルトのような生地にレッドカラントのジャムを挟んで格子模様に生地を乗せて焼くシンプルなケーキです。

リンツ地方発祥のお菓子なのでリンツァートルテというこれまた非常にシンプルな名前がついています。

リンツァートルテの歴史は古く、原型とされているお菓子「リンツァー・マッセ」はなんと世界中に存在するトルテのレシピの中でも最も古いものだとされています。

フランスのアルザス地方にも広まっていてタルト・リンツという名前で地方菓子として紹介されていたりします。またアルザス地方では、ナッツ類と香辛料のサブレ生地にレッドカラントではなく、フランボワーズのジャムを挟んだものが人気だそうです。

クーゲルフプフ

クーゲルフプフはフランス語でクグロフと言います。クグロフの方が呼び名として有名ですね。オーストリア、ドイツ、フランス、スイスで食べられていてフランスではアルザスの地方菓子にもなっています。

名前の由来は諸説あるのですが、クーゲル(頭巾)とフップフ(酵母)が語源で、農婦が身に着けた白い布製フードの形になぞらえたという説と、リボヴィレに住むクゲルという陶器職人の名が語源であるという説が有名です。後はキリスト誕生を予言した東方三賢人のターバンにちなんで名づけられたとも言われています。

素朴な焼き菓子で、見た目が特徴的です。山の様になっていて真ん中には空洞、側面は斜めに溝があります。専用の型を使って焼きます。この陶器の型が色や柄が可愛いので飾りとしても人気です。またクーゲルフプフの青銅の型がウィーン近郊の古代ローマ遺跡、カルヌントゥムから出土したことから紀元前後より作られていたことが分かっています。

生地の製法には決まりが無くてホップ酵母やイースト菌を用いて発酵させたものや、ただのバターケーキだったりします。用はこの型で焼くことが重要なんですね。フランス、アルザス地方ではイーストを使って発酵させたものが主流となっていて、ウィーンでは純粋なバターケーキが主流です。

味に決まりは無いのですが、アルザスの伝統的なものだとアーモンドとキルシュヴァッサー(サクランボのお酒)で香りづけした干しブドウを生地に入れて上にアーモンドを飾り粉糖をふりかけます。

クーゲルフプフはフランスのルイ16世の王妃でウィーンで生まれ育ったマリー・アントワネットが愛したお菓子として有名です。

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」

アントワネットと言ったらこれ!という有名な言い伝えがありますが、このお菓子はクグロフ(クーゲルフプフ)という説があります。実際アントワネットがこう言ったかは定かではなく、アントワネットを嫌っていた人たちが捏造したとも言われています。

国の一大事の時ですら贅沢な暮らしにこだわり続けた王妃の愚かさ、そして世間知らずさを強調するこの言い伝えがここまで広まったのは実際アントワネットが無類のお菓子好きだったからなのではないでしょうか。

バニラキプフェル

三日月の形をしていて周りに粉糖をふるったクッキーです。名前の通りバニラを材料に使うので甘い香りがします。またバニラの含有量が多く生地もあまり練らないのでサクサクホロホロしたスノーボールに似た食感になります。

バニラキプフェルはクリスマスの時期に食べられるクッキーで「キプフェル」は三日月という意味があります。また三日月に似ている馬蹄の形に成形されることもあります。何故かというとヨーロッパでは馬蹄は幸せを呼ぶ形と言われているのでクリスマスに縁起の良いお菓子を!ということです。

バニラキプフェルは三日月の形をしているのですがクッキーの抜型で抜くのではなく手で棒状に捏ねたものを三日月型に丸めて作ります。生地のバター含有量が多いのでのして抜くのにはべたついてしまって向いていないんですよね。焼くときに若干の厚みがある方がホロホロ感が楽しめます。

インペリアルトルテ

オーストリアにある「ホテル・インペリアル」で作られているチョコレートケーキです。インペリアルトルテはミルクチョコレートのグラサージュがかかっていて中にマジパンの薄い層とチョコレートとアーモンドのガナッシュの層が幾重にも重なっています。ビターアーモンドの香りの強いお菓子です。また四角形でケーキがピッタリと入る箱に入っているのも特徴的です。

日本での知名度は低いですが、ザッハトルテ、リンツァートルテとともにウィーン菓子の中でも「三大トルテ」として人気があります。

インペリアルトルテは1873年ホテル・インペリアルのオープンに際して作られました。このケーキはフランツ・ヨーゼフ皇帝のお気に入りで、皇帝の存命中は皇帝と皇帝が高く評価する要人にのみ供されていたそうです。なので日本での知名度が低いんですかね?

ザッハトルテが砂糖感が強いケーキだとすればこちらはアーモンド感が凄くどっしりとしたチョコレートケーキです。上掛けのミルクチョコレートはザッハトルテと違ってフォンダンでは無いのでその点ではとっつきやすいのかなと思います。ただビターアーモンドの香りを知らない人が食べると最初はびっくりするかと思います。ビターアーモンドの香りは杏仁の香りと似ていて独特の甘い芳香です。

まとめ

ウィーン菓子の日本での認知度はまだまだ低く、日本で食べられる機会があまりないのが残念ですがとっても魅力的なお菓子がいっぱいあります。個人的にフランス菓子とウィーン菓子は本場に行って食べたいお菓子ですね。イタリアのお菓子もいいですね。

ちなみにホテルザッハーのザッハトルテとインペリアルトルテは本場のものが日本でも購入できます。少々お値段が張るのですが気になる方はぜひ購入してみてください。

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