凝固剤について

お菓子の基礎知識




ムースやゼリーを作るのに欠かせない凝固剤ですが凝固剤といっても何種類かあってそれぞれ特徴があります。

特徴に合わせて使う凝固剤を変えていくことで美味しいお菓子が作れるし、なぜこの凝固剤を使うのか理解が深まると応用も出来るようになると思うので今回は凝固剤について紹介します。

凝固剤の種類

凝固剤はフランス菓子で主に用いるゼラチンや和菓子で用いる寒天やカラギーナン、ペクチン、アガーなどがあります。

どれも少量添加するだけで液体を固めることが出来、少量なので重さを量るときには正確に量ることが重要になります。出来れば0.1単位で量れるものを使うのが好ましいですね。

ゼラチン

ゼラチンの原料は牛や豚の骨や皮に含まれるコラーゲンという名前の硬タンパク質です。

ゼラチンの中でも板状に固めて乾燥させたものを「板ゼラチン」、ひも状に乾燥させて粉砕したものを「粉ゼラチン」と言います。

非常に口当たりが良くて、独特な柔軟性を持っているのでゼリーやバヴァロワ、ムースなど、お菓子の中でもデリケートなデザートを作る場合に好んで使われます。

ゼラチンは他の凝固剤と違って比較的低い温度から固まりの構造が崩れ始めます、だから口の中の温度でも簡単に溶けます。

しかし、夏場などの気温の高い時期だとすぐに溶けてしまうので、冷蔵庫で保管したりするなどの温度管理が重要になります。

粉ゼラチンと板ゼラチンについて

粉ゼラチンと板ゼラチンでは扱い方に違いがありますが成分の違いはありません。

粉ゼラチンは分量を量ってその重量の4~5倍の水を計量して加えて戻し、湯煎で溶かしてから使用します。戻す水の分量を量るのでお菓子の固まり方はいつも一定になります。

板ゼラチンは1枚の重さが一定なので計量する手間がかかりません。また、水で戻す時間が粉ゼラチンよりも比較的短くてすむという利点があります。

でも板ゼラチンを戻すときに冷水に付けて柔らかくなったら水気を絞って使うのですが、この方法ではゼラチンの吸水量が一定ではないという欠点があります。

なのでお菓子の固まり方がいつも一定になるわけでは無く、バラつきが出てしまいます。

使い分けは上記の点をふまえて作る環境や好みによって選ばれています。

寒天

寒天は羊羹や淡雪羹などの和菓子の流物にとってなくてはならない凝固剤です。

原料はテングサなどの海藻です。本来は海藻の中で細胞壁を保持するという大切な役割を果たしている物質で寒天の成分が水の中に溶けだしてしまうということはありません。

しかし水には溶けにくいけれど熱水には溶けやすいという性質を持っています。ここは他の凝固剤と同じです。

テングサを熱水で加熱すると煮汁の中に寒天の成分が溶け出てきます。これを漉して凍らせた状態で乾燥させたものが市販されている寒天です。

寒天はゼラチンのように口どけ滑らかではなくしっかりとした歯ごたえが特徴的です。

また他の凝固剤と比べると水分が分離しやすいので寒天を使う場合は砂糖の量を多くして出来るだけ保水性を高めるようにします。

カラギーナン

カラギーナンは日本ではあまり有名ではないですが、アメリカでは牛乳をたっぷり使ったデザートや冷凍用のデザートなどに幅広く使われています。

カラギーナンの原料はスギノリやツノマタという海藻です。同じ海藻でもテングサから作られる寒天とは異なる性質を持っています。

カラギーナンの特徴としてはゼラチンや寒天と違い煮溶かしたものを冷やして固めるだけではなくミネラル類(カリウム、カルシウムなど)やタンパク質の作用によってゲル状に固まります。

例えばカラギーナンを溶かしておいた液体に牛乳を添加して急激に凝固させることが出来ます。

またゼラチンや寒天は冷凍するのには向いていないのですがこのカラギーナンは冷凍しても本来の特性が無くなることはないです。

なのでカラギーナンの特徴を生かして、ミルクプリンやヨーグルトなど大量の牛乳を用いるものや冷凍用デザート、インスタントデザートなどに利用されています。

カラギーナンは3種類に分けられます。κ(カッパ)型(ミネラルまたはタンパク質で固まる)ι(イオタ)型(ミネラルで固まり粘弾性に優れていて冷凍出来る)λ(ラムダ)型(水に溶かすと強い粘性を示し保水性が高い)それぞれの特徴で使い分けます。

また優れた粘性や保水性を生かしてソース類の増粘剤やアイスクリームの安定剤としても利用されます。

ペクチン

ペクチンは野菜や果物に含まれる天然のゲル化剤です。植物の細胞壁や細胞間質の中に存在していて細胞の硬さを調節したり、細胞を保持したりする大切な役割をはたしている物質です。

例えばジャムは果物や野菜に大量に砂糖を加えて煮詰め、独特のトロミを出します。トロミがついてくるのはペクチンのおかげです。

ペクチンの含有量は植物の種類によって違います。また、同じ植物でも成熟段階によって含有量が変わります。成熟度が未熟なものだと少なくなり熟すごとに多くなります。しかし熟しすぎてしまうとゲル化する力が弱まってしまいます。ジャムを作るときは果物の熟し具合に注意して最も良い状態の果物を使いたいです。

もともとペクチン含有量が少ない果物でジャムを作る場合は市販のペクチンを追加します。市販のペクチンは主に柑橘類の皮やリンゴの搾りかすを原料としています。

アガー

最近水ゼリーなど透明度が高いゼリーが注目されています。透明度の高いゼリーを作るのに使われるのがアガーという凝固剤です。

原料はκ型カラギーナンとローカストビーンガムというマメ科の種子の抽出物を合わせたものです。

原料にカラギーナンを使っているため性質はカラギーナンと似たようなものになります。

常温に出しっぱなしにしていてもゼラチンのように溶けないため長時間持ち歩くのに向いています。

まとめ

凝固剤は

ゼラチン

寒天

カラギーナン

ペクチン

アガー

と大きく五つに分けられます。一番くちどけが良いのはゼラチンですが温度管理には注意してください。

ジャムやフルーツを使ったナパージュを作りたい場合はペクチン、冷凍保存したい場合はカラギーナンなど特徴に合わせて使っていきたいですね。

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